絹姫サーモンとは?
 
  絹姫サーモンとは?
  『絹姫サーモン作出の経緯』
愛知県水産試験場内水面漁業研究所,三河一宮指導所では、昭和63年度に鳳来マスとアマゴ或いはイワナとの交雑種であるニジアマ・ニジイワ(異質三倍体魚)の作出技術の開発に着手しました。これはバイオテクノロジー関連の基礎技術が整ってきて、染色体操作による品種改良の可能性が開けてきたことが背景となっています。当時,大型魚の需要が刺身用素材として高まっており、ニジアマ・ニジイワの作出は大型魚のブランド品として出荷できる新たな品種の作出に狙いがありました。以降、雌性発生技術、染色体倍数化技術、性転換技術を導入し平成4年にはニジアマ・ニジイワの作出技術がほぼ確立さました。
このニジアマ・ニジイワ(無斑型)は平成4年7月、愛知県知事によって「絹姫サーモン」と命名され、さらにこの絹姫サーモンという名称は平成7年、愛知県淡水養殖漁業協同組合が県の承諾を得て商標登録を行っています。

『ニジアマ・ニジイワの特性』
河川に生息、もしくは養殖の対象となっているマス類の中では、アマゴがもっとも美味しい魚とされています。しかしアマゴは大きくならない上に警戒心が強く、病気に弱い為に養殖しにくい魚で、イワナも警戒心が強く養殖しにくい魚ですが、病気にかかり難い特徴があります。一方ニジマスは養殖しやすい上マス類の中では最も成長が早く、大型化する特徴があります。しかし近年様々な病気が発生し、アマゴやニジマス養殖に大きな被害が出ている事も見逃せません。ニジアマやニジイワがそれぞれの長所を兼ね備えていれば理想的ですが、100%と言う訳にはいきません。
これまでの特性調査等で次の事が解ってきました。
ニジイワ・ニジアマは成熟しない為に大型になり、成熟期(10月から3月)の肉質の低下もなく、大型ニジマスに比べ臭みや食感など大幅に品質の向上がみられ、刺身用として適している。ニジアマは病気に弱く、養殖の歩留が良くない。ニジイワはニジマスの被害が大きいIHN病(ウイルスによる感染症)に対して抵抗力を持ち、成長も早いが、孵化率が悪い。

『三倍体魚の養殖利用について』
三倍体魚は染色体操作で作られるので、遺伝子そのものを変化させる訳ではありませんが、水産庁の指導で作出した魚種を様々な見地から評価する事、更にその評価を水産庁が確認する事が義務付けられています。従って三倍体魚の利用は、水産庁がその評価を確認して初めて可能となります。
全雌異質三倍体ニジアマは平成6年6月に、全雌異質三倍体ニジイワは平成9年7月にそれぞれ水産庁によって愛知県水試が行った特性評価が確認されており、養殖が可能となりました。
鱒やイワナ、大西洋サケ、アマゴなどは200万年前に同じ原種から分化した魚と言われています。温度ショックを与える事で受精する絹姫サーモンは、野菜や果物、牛や豚など、多くの品種改良された農畜産品と同じ様に、美味しさを追求した初めての品種改良魚と言えます。

『味について』
最大のセールスポイントである味のほうは、ハマチなどに似たしっかりとした食感 と適度な脂乗りがあり、刺身や寿司種などの生食用としてご利用いただけるほか、 従来のサーモンと比較して独特のサーモン臭さが無いため、洋食食材として利用 される場合でもソースの微妙な風味を損なうこと無くご利用いただけます。
また、 海で回遊する天然のサーモンには寄生虫を持つ可能性があるため、生で食べる ことはできませんが、淡水養殖である絹姫サーモンにはその可能性が全くありませ ん。 しかも水質や病気など万全の管理を行っていますので安心してご利用いただけます。

  400万年前の記憶『絹姫サーモン』の遥かなロマン
今から400万年前、北大西洋にはサケ科のイワナ属とニジマス属の共通の原種が生息していたと考えられています。約200万年前頃から地球は徐々に寒冷化時代に入り、その頃からイワナ属とニジマス属の分化が始まり、約100万年前頃にイワナ属やニジマス属の分化が完了したとされています。
やがて地球の寒冷化が進むに従い、イワナ属やニジマス属は北極海からベーリング海峡を経て太平洋に出て、そしてそこに流れる古オホーツク海流や古親潮の流れに乗り,日本近海までたどり着きます。イワナ属に限って言えば、或るものはそこから東シナ海方面に行き、アマゴの原種にあたるヤマトマスを派生し、或るものは日本海の起源にあたる地域に入り込み、サクラマスの原種に分かれて行きます。
その間、地球は氷期と間氷期を繰り返し、地殻の変動もしばしば行われていました。こうした長い年月の中で、イワナは「棲み分け」などの生き残る術を学び、イワナ属のそれぞれの種 が確立して行きます。
本州では標高1000m以上の渓流で見られますが、いずれも河川の最上流に住み冷水を好む魚であり、同じイワナ属の北海道に住むオショロコマやアメマスの一部は、河川で繁殖した後に銀毛となって海に降り、40〜50cmにも成長して再び産卵の為に遡上するものもあります。イワナのこうした進化の様子から氷河期の生き残りとも呼ばれ、その生命力から古来より精の付く魚と珍重され,骨酒などでも知られています。
ニジマス属について言えば、北大西洋に留まったニジマス属の一部は、ヨーロッパや北アメリカの大西洋岸の河川を産卵場所として独自に進化の道を辿り、アトランティックサーモンと呼ばれ、ノルウェイなどから輸入され日本でも広く知られています。さて、ベーリング海峡をイワナ属と共に太平洋に出たニジマス属の一部は、古アラスカ海流から古カルフォル二ア海流に乗り、北アメリカ西海岸の河川に定着してレインボートラウトの原種となります。現在でもサケと同様に海で育ち、産卵の為に川を遡上する降海型はスチールヘッドと呼ばれ、1mを越すものもありヨーロッパへも移植されました。
400万年前にイワナ属とニジマス属の共通の原種であったサケ科の魚は、遥かな時間と進化の中で、環境に耐え生きのびる為に分化し独自の「種」を作り育ててきました。400万年後の今『絹姫サーモン』は、その分化したサケ科のイワナとニジマスを交配し、それぞれの遺伝子を受け継がせながら今に蘇った魚だと言えるでしょう。